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表面処理技術

疎水化表面処理

HMDS処理ともいい、ウェーハ表面を疎水性にするための処理です。レジストの現像液が水溶液である場合(ポジ型レジストを使う場合など)に必須の処理です。HMDSとはヘキサメチルジシラザンの略称で、これは次のような反応によってSiウェーハ表面にメチル基(―CH3)を結合させる物質です。

 この化学式の左辺にあるHO–Si≡はシラノール基と呼ばれ、Siの酸化物(SiO2)の表面に存在し、表面を親水性にしています。大気中ではSiの結晶の表面にも通常は自然に酸化膜が生成するので、Siウェーハの表面にもやはりこのシラノール基が存在します。ですから、HMDSとSiウェーハとの間ではこの反応が必ず起ると考えられます。

ウェーハ表面にある2つのシラノール基につき1つのHMDSが反応し、その結果、シラノール基はメチル基という疎水性の傘で覆われた形になりますから、Siウェーハ表面全体が疎水的な性質に変ります。なお、式に示されるとおり、この反応によってNH3(アンモニア)が発生します。当然ですが、シラノール基の無い表面に対してはHMDSによる疎水化はできません。

 さて、シラノール基の存在する表面(例えば自然酸化膜の付いたSiウェーハやCVD膜の表面)は親水性ですから、水を主成分とする現像液(例えばポジ型レジスト用の現像液)を使用する場合、現像液がウェーハ表面レジストとの間に容易に浸入します。これにより、現像の際にレジストのパターンが剥がれるという問題が生じます。HMDS処理の役割は、ウェーハ表面を疎水化して現像液の浸入を防ぐことにあります。
このようにレジストが剥がれにくくなることから、「HMDS処理はレジストの密着性を良くする」と言われることもあります。